【真綿手引紬織物】
新田経緯紬/諸紬
―中格子―
制作/新田秀行


こちらに掲載の紬は新田英行氏により織られた真綿紬。　惜しみなく手間暇を掛けられたことはそのふっくらとした風合い、手に取った際のやわらかさ、そしてふわりとした軽さからも感じ取ることが出来ます。　目を凝らしてこの紬織物を見ているとこの格子がほんのりとグラデーションのかけられた格子であることがわかります。　いかが思われましたでしょう。　とても魅力的な「色」と思われませんか。　この格子織物を単なる格子の織物ではなく、極めて魅力的な印象にしているのは格子にかけられたグラデーションの揺らぎ、そしてこの「色」なのではないかと思います。　微妙な加減の保たれた色みです。＜あえて色の名を申し上げるなら＞千歳緑（ちとせみどり）と黒の格子。　ただその二つの色のすべてに単なる色を表す文字以上の質感（色相）が籠められています。　

無責任な解説で申し訳ないけれども「美しい布（色）は美しい（色）としかお伝えしようがない」と言うのが極めて端的な感想です。　ぼんやりと眺めていると知らず知らずの内に気が絹布の中に彷徨ってしまいます。（ちょっと大袈裟な表現ですね。）　言わば、私自身が好む二色を美しい格子の織物としてポンと目の前に置かれてしまったかのような感じと言えば伝わりますでしょうか。　まさにそんな感じです。　さらに付け加えて申し上げるならば、紬織物が保つ特有のほっこりとした上質な質感が保たれたままに。　そしてこの質感こそが新田英行氏の真綿紬織物固有とも言える極上の着心地を生み出してくれるのです。　稚拙な解説ではあったとしても、ここまでの解説の中のどこにも誇張はありません。　ぜひ、ご自身で味わってみてください。　私の言葉に確実に頷いて頂けます。 真綿紬、その表情はどこまでもどこまでも柔らかく、いろいろさまざまを溶かし込み、やがて一枚の着物に。