珊瑚樹の
映ゆる洋館
鳥の声
橋場美篶
末黒野
精緻な織に魅せられ…。
珊瑚色
【西陣織袋帯】経錦 ―上代花文―
制作/北村武資
こちらの作品のようにかくも美しく丁寧な染織を前に、一体どのような解説をすればこの帯に籠められた美しさの本質をお伝え出来るのか、まったくもって判らなくなることがあります。 まさに織手の魂が籠められたかのような上質を目の前にしていつも考えさせられるのです。 私が何かを説いたところで果たして伝わるのだろうか。 型録的なこと、いわゆる(カタログ、スペック、データ)は主観が入らないからむしろ容易です。 でも主観を折り交ぜるとなると果たして…。 そんな詮無い思いを巡らせながら先日からずっと眺めています。 精緻な織、秀逸な意匠に惹き込まれ、いつの間にか時間ばかりが過ぎてしまう。 結局のところ、どこをどう解説したとしてもこの帯の保つ魅力の半分もお伝えすることは到底無理かもしれない、私の語彙力では…、という呉服商の店主としては些か情けない結論。
それでも少しだけ…。
こちら、ご覧頂けますように意匠化された花が片身違いで織り上げられた袋帯です。 画像でもご覧頂けますように極めて精緻に織り上げられています。 他に類を見ないほどかと問われれば、同じ程度の水準の西陣織が他にない訳ではありません。 使われた糸質がそれほどに上質極のかと問われましても他に同じ水準の品質を持つ西陣織はあります。 眺めていて心臓を鷲掴みにされるようなこともないのです。 可笑しな話だと自分でも思います。 それにも拘わらず、眺めているとやはりこの帯の保つ圧倒的な美しさに惹き込まれているのです。 精緻な織で表現された上代花文という意匠、そして珊瑚色という美しい地色 。
経糸の浮き沈みで織り上げられた表情は一切の衒いなく、極めて正統的なところに惹きこまれてしまいます。 古から伝わる文様ながら古い様相は感じません。 尽くされた上質を必要以上に押付ける気配もない。 特に何かを強く主張するものでもない。 身も蓋もない言い方をしてしまえば、「丁寧が尽くされた織物であること」、「精緻な織が尽くされていること」、ある意味、それがこの帯の魅力のすべて… 一言で言ってしまうならば、帯として、またひとつの織物として“極めて高い次元で完成されている”という“極み”の魅力なのかもしれません。
見る者の眼を濁らせてしまうかのような、もっと言うならば見る者の美意識を覆ってしまうかのような西陣織ではありません。 華美過剰な煩さを一歩手前のところで留め置いています。 要するに抑制が効いているのです。 目に刺し込む色、鬱陶しさを想わせる乱雑さを一切排除しているのです。 つまり、すべてが完成されているのです。 衒いの一切ないこうした帯は決してひと目を引くものではありません。 でも、どれほどの時間を掛けて眺めていても決して飽きることの無い普遍的な美しさ、帯本来の美しさを保っているのです。 実に見事な西陣織だと思います。
附下、訪問着、色留袖、色無地、江戸小紋、などやわらかものはもちろん、無地印象の織物にも適います。 お楽しみ下さい。
《北村武資》 1968年/日本工芸会正会員
1990年/京都府指定無形文化財保持者(羅・紋織)に認定
1995年/羅において重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定
2000年/経錦において重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定
商品番号 |
TNM-OOE-2121 |
商品名 |
北村武資制作、経錦袋帯、上代花文 |
品質 |
絹100%※金銀糸・箔を除く |
価格 |
¥676,000 (表地のみ仕立て無し/税込) ¥687,500 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
八寸一分~二分程(約31cm)/ 一丈二尺弱(約4m45~50cm程)・※お仕立て上がりの際のサイズ※多少の誤差はご容赦下さいませ。 |
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